「ええかっこしい、カッコつけ」はもういないのか。

2017/01/19

先日お手伝いをしているインディーズ雑誌の編集作業をしている横で編集長が何やらバッグのPRをしている方とお話をしていた。聞くところによるとカナダはトロントで生まれたバッグのPRをされている方のようだ。ブランドを「YNOT(ワイノット)」という。

出典:http://geared.jp/editors/2015/07/ynot.html
筆者はバッグメーカーにも従事したことのある経験から、目の前のサンプルを思わず手にとっては、その生地の質感や内装、使い勝手などを事細かに見てしまった。

出典:http://steps.jp/news/2016/02/ynot.html
上の写真のように「コブラバックル」と呼ばれる、オーストリア軍のパラシュート部隊や、クライミングのシーンでも使われる超強力なパーツを使用しているモデルもあるようだ。(PRの方が持っていたのは別のモデル。)噂ではこのバックル、2トンの重さまで耐えるというが、筆者の周りにその耐重性を計り知る術がないのが悔しい。まあバックルが壊れる前にリュックの底が破れてしまうこと必須ではあるが。

出典:http://steps.jp/news/2016/02/ynot.html
筆者が実際に拝見させてもらったリュックについていたのがこのバックル。ドイツ製のバックル「フィドロック」というパーツを使用しているモデル。マグネットによって開閉されるこのバックルもコブラバックルに負けないほどユニークで「男ウケするアイテム」である。そう、男ウケするほど物はいいのだろうけれど、実際にこれが飛ぶように売れるかと言われるとそれは別次元のように思う。
実際にこのYNOTの価格帯を見てみると、一番安いリュックタイプで12,500円、高いタイプでは4万円近いアイテムもある。一番安いリュックは折り畳んで持ち運びできるパッカブル仕様にはなっているが上記で紹介したような、特殊なパーツ類は使用していない。そのような仕様のアイテムを望むなら大体25,000円以上の価格帯になってくる。特殊なパーツを使う分、格好良さはアップするが商品価格もそれに応じてアップするのは言うまでもない。実際に筆者もこのアイテムを買うかと言えば、即答はしかねる。かっこよさや機能の凄さは実物を触って分かるように文句なしではあるが、そこですぐに飛びつくことはしない。

出典:http://www.carrot-online.jp/fs/carrot/AT-B0193A
ここ最近、街中を歩いているとこの形のリュックを見かけることはないだろうか?アネロというブランドの口金リュックである。昨年の11月、筆者はタイのバンコクに出かけたのだが街ゆく若者が何人もこのリュックを背負っており、さらにはマーケットでは堂々と偽物まで販売していたのには驚愕した。日本ではよく訪日外国人がお土産に買っていくという話を耳にしたが、ここまでとは思ってもみなかった。

出典:http://www.carrot-online.jp/fs/carrot/c/weblimited2
南充弘さんのブログでも「アネロ被り(アネ被り)」現象が発生していると指摘している通り日本人にも外国人にも売れに売れまくっているのだ。その要因として
  1. 価格が安い(4,500円から8,000円未満)=学生や主婦でも買いやすく購買層が広い
  2. デザイン、色合いが豊富=男性でも女性でも持ちやすい
  3. 訪日外国人効果
が挙げられるだろう。手頃な価格の割に、そこまで安っぽくもなく色合いも豊富に展開しているから男女問わずいろんな年齢層が買っていく。日本では主婦であろう方が背負っているのをよく見かけるのはこのため。(ママリュックとして紹介されているサイトもあり。)アネロのリュックには2トンの重さに耐えるパーツや撥水性抜群の生地などは使われていない。ターゲット層からしてそういった付加価値は不要なわけである。消費者がアネロに求めるものはデザインが良く手頃な価格であるということなのだ。だからこそ消費者はそこに飛びつく。
リュックという、物を入れて運ぶだけのアイテムに対して過剰なスペックを求める、ある種マニアックな気持ちも筆者は凄く分かる。男は薀蓄好きと言われる。別にそれを自慢したいわけではないが、何か聞かれた時にさらっと説明できると、ちょっといい気にもなる。言ってしまえば「ええかっこしい、カッコつけ」なわけである。物に対しての価値観が変化しているなんて言われて久しいけれど、ええかっこしい、カッコつけがどのくらい存在するのだろうか。そして、そういうことが出来るアイテムやブランドがいくつ残っているのだろうか?

出典:http://geared.jp/editors/2015/07/ynot.html
少し前見たテレビ東京のワールドビジネスサテライトでも特集していたが、ここ最近ビジネスマンも両手が空く、荷物を多く入れられるなどの理由でトートバッグからリュックに切り替える人が多く、人気を博しているとのことだった。(紹介していたアイテム全てが黒色のアイテム。)やはり人は利便性をまず重視し、そして実用的な機能性が備わっているか、そのシチュエーションで使う上で浮かないデザインか、などを見るようである。YNOTのようなハイスペックなアイテムを売り出すには、災害時にも頭を守れるリュック!火事が起こっても火の粉をはねのけてくれるリュック!断水しても水を漏らすことなく運べるリュック!と言ったような緊急時に役立つスペックに切り替えてはどうかと、冗談半分に思ってしまう。まさか、緊急時にまでカッコつける人はいないだろう、、、。


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